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2025.12.25
こうした習わしに込められた意味を知ることで、京都の年の瀬と新年を、より深く、豊かに味わうことができるでしょう。
大晦日の夜、八坂神社ではその年最後の神事・除夜祭が執り行われたあと、境内に設けられた灯籠に「をけら火」が夜を徹して焚かれます。この火をいただくための参拝が「をけら詣り」です。
をけらとは、キク科の薬草「白朮(おけら)」のこと。燃やすと独特の強い香りを放つことから、古くから邪気を払う力があるとされてきました。
大晦日の夜に焚かれる「をけら火」。をけら詣りは八坂神社のほか、北野天満宮でもできる。
この白朮と護摩木をくべた灯籠の火を火縄(吉兆縄)に移して持ち帰り、神棚の灯明やお雑煮の火種に使うことで、1年の無病息災を祈願するのです。火が消えないように縄をくるくる回しながら歩く人々の姿は、京都の年越しの風物詩。燃え残った火縄は火伏せのお守りとして、台所に祀られます。
夜が更けるにつれ、聞こえてくるのは除夜の鐘の音。17人僧侶が「えーいひとつ」「そーれ」の掛け声のもと大きな梵鐘を打ち鳴らす知恩院のものが有名ですが、約1700もの寺院があるといわれる京都市内では、まちのあちこちで鐘が撞かれます。
しんと静まりかえった夜に響く鐘の音とその余韻が冷えた空気に溶け込んで、静かに年が改まっていくのを感じさせてくれます。
京都のそばと聞いて、にしんそばを思い浮かべる人も多いでしょう。甘辛く炊いた身欠きにしんをのせた一杯は、京都の年越しの定番として広く親しまれています。でもなぜ、海から遠い京都で「にしん」なのでしょうか。
流通の少ない時代、北海道から北前船で運ばれてくる「身欠きにしん」などの干魚類は、新鮮な魚介類が手に入りにくかった京都の人々にとって貴重なたんぱく源。保存が利くため、おばんざいの食材としても使われるなど、京都の食文化と深く結び付いてきたのです。
にしんそばが生まれたのは明治時代。祇園・南座の隣にある蕎麦屋「松葉」が発祥とされている。
新しい一年の始まりに「大福茶(おおふくちゃ)」をいただくのも、京都ならではの習わし。
梅干しと結び昆布を入れたこのお茶は、古くから伝わる縁起もの。平安時代に京都で流行した疫病を、六波羅蜜寺の空也上人が梅干し入りの薬茶を振る舞って鎮めた故事にちなんで、一年を元気に過ごせますようにという願いが込められています。
元日の朝、台所から漂ってくるのは白味噌のやさしい香り。地域によって雑煮のかたちはさまざまですが、京都は茹でた丸餅と頭芋、大根、金時人参などを入れた白味噌仕立ての雑煮が定番です。
汁はポタージュのように濃厚でまろやか。甘みのある白味噌と、やわらかく煮た具材が合わさり、体にすっとなじんでいく、上品で味わい深いお雑煮です。
うっすらと透けて見える淡いピンクが、新春の華やぎを感じさせる「花びら餅」
お正月の縁起菓子にも、白味噌の風味をいかしたものがあります。白味噌餡と蜜煮にしたごぼうを、やわらかな求肥や羽二重餅で包んで半月状に折った「花びら餅(菱葩餅)」です。
その由来は、平安時代の宮中で行われた正月行事「歯固めの儀式」。鏡餅、大根、押鮎(塩漬けした鮎)、橘などを食べて歯の根を固め、長寿を願う儀式で、この歯固めの品が「菱葩(ひしはなびら)」という餅に変化。それが花びら餅の原形になっています。
年の瀬からお正月にかけて、京都のまちを歩いていると、家々の軒先に松が掛けられているのに気づきます。根を残したままの松を、和紙や紅白の水引などで飾ったお正月飾り「根引きの松」です。
京都で最も多く見られるお正月の玄関飾り「根引きの松」。門松の原型だといわれている。
根をつけたままなのは「地に足をつけ、成長し続けられるように」という願いが込められているから。生命力の象徴とされ、新しい年に歳神様を迎える依り代として用いられてきました。
自然な枝ぶりをいかしたその姿は、門松と比べると随分控えめ。新しい一年を静かに迎える心持ちにふさわしい凜とした美しさが宿っています。
松や注連縄、裏白など、それぞれに由来があり、願いが込められているお正月飾り。こうしたお正月の装いは、華美でも目立つものでもありません。それでも、年の変わり目をきちんと受け止めるために欠かせない行いなのです。
Text by Erina Nomura
野村枝里奈 京都在住のライター。大学卒業後、出版・広告・WEBなど多彩な媒体に携わる制作会社に勤務。2020年に独立し、現在はフリーランスとして活動している。とくに興味のある分野は、ものづくり、伝統文化、暮らし、旅など。Premium Japan 京都特派員ライターとして、編集部ブログ内「京都通信」で、京都の“今”を発信する。
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投稿 京都のゆく年くる年──年越しからお正月まで暮らしの中に息づくしきたり は Premium Japan に最初に表示されました。